スタンフォード講演に感動した全ての人へ:スティーブ・ジョブズ1995 ~失われたインタビュー~
21稀代のビジョナリーが、まだペテン師と呼ばれていた頃。
1995年、ジョブズがアップルに復帰する一年前、一時間のインタビュー動画。
映画館で公開されていたこのインタビュー動画が、iTunesでも配信が始まりました。 (東京以外ではまだ上映されている映画館もあるようです)
上映情報 | THEATER | 映画『スティーブ・ジョブズ1995 〜失われたインタビュー〜』
まず本題に入る前に。
YouTubeで探せば英語のものであれば、Apple復帰前のジョブズの動画はたくさんあります。
基本的にはこのインタビューも「Good artists copy, great artists steal.」など有名な言葉や逸話が多いのですが、活字でこそあれ、それを本人の肉声で生々しく聴く機会は(少なくとも日本語では)ほとんどありませんでした。
ぶっちゃけた話このインタビュー動画に関することだけで、5, 6個記事が書けるし書きたいぐらいなのですが(笑)、下記のキーワードに何か引っかかるものがあれば、きっと示唆は得られるインタビューだと思います。
◯ビジネスの世界では物事が深く考えられていない。 ◯米国人が全員1年はプログラムを学習するべき理由とは? ◯なぜ優れた製品を作れなくなるのか? ◯凄いアイデアだけでは凄い製品は生まれない。 ◯成功を信じて突き進む最高のチームとは? ◯自分が正しいかどうかにはこだわらない。 ◯マイクロソフトの欠点とは? ◯ウェブの登場によって夢が実現する。コンピュータに新しい命が吹き込まれる。 ◯ジョブズを駆り立てる情熱とは? ◯未来の方向を見定めるには? ◯日常生活の枠の外に潜んでいるものとは? ◯どうすれば愛される製品をつくれるのか?
Table of Contents
- SECRET TONES
- IN BUSINESS
- MIKE MARKKULA
- FIRST VISIT
- CONTENT
- FINDING THE BEST
- DESKTOP PUBLISHING
- JOHN SCULLEY
- STATE OF APPLE
- THE FUTURE
- BICYCLE OF THE MIND
- HIPPIE OR NERD
前半はアップル創業前から一度追放されるところまでなので、ある程度、背景について知識があったほうが良いかも知れませんが、後半は彼の思想、ビジョン、価値観がありありと語られ、示唆に富みます。 先を見通して点をつなぐことはできない。 さてここから本題。
一部のアップルファンを除き、世の中の大半の人にとってスティーブ・ジョブズの動画といえば、「Stay Hungry. Stay Foolish.」の2005年 スタンフォード大学の卒業生に向けた講演でしょう。(人によっては「Today, Apple is going to reinvent the phone」の2007年 iPhone発表かも知れません。)
そして彼のスタンフォード大学での講演に感動したならば、このインタビューを見ないのは片手落ちだと思います。
有名な一節があります。
“You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever. This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.”
”先を見通して点をつなぐことはできない。振り返ってつなぐことしかできない。だから将来何らかの形で点がつながると信じなければならない。何かを信じなければならない。直感、運命、人生、カルマ、その他何でも。この手法が私を裏切ったことは一度もなく、私の人生に大きな違いをもたらした。”
Text of Steve Jobs’ Commencement address (2005)
スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学での卒業式スピーチ - himazu archive 2.0
講演では、ドロップアウトした大学の授業に潜り込みカリグラフィーのクラスを取ったことが、Macの美しいフォントに繋がることが紹介されます。
忘れてはならないのは、講演内でも触れられているとおり、カリグラフィーのクラスを取っていたときには彼自身、それがMacに繋がるなんて想像だにしていなかったこと。
彼はそれが何かに繋がると信じて、ただその時点でのベストを尽くしていただけ。
例えばインタビュー内でも語られますが、パロアルト研究所で見せられた3つの研究内容の内、GUIに心を奪われ、そのときに全く彼の頭に残らなかった残り2つのうちの1つ。「オブジェクト指向」のOS、NeXTSTEPを開発することになります。
そしてそれをMacintoshの次世代OSのベースとするべくアップルが買収し、ジョブズはアップルに返り咲き、そしてそのOSは世界に衝撃を与えるiPhoneのOSのベースとなっていく。
こんな点に繋がるなんて、彼自身ですら想像していなかったと思います。
ビジョンと現実の落差 近年でジョブズほど華々しい成功と挫折、そして驚異的な復活劇をした人はいないでしょう。
稀代のビジョナリーでありながら、多くの人を巻き込み自らのビジョンを実現する情熱と行動力。
1995年当時、彼はインタビュー内で予言しています。
「Webの登場により、コンピュータはコミュニケーションの手段になる。」
”whole new generation of life into personal computing, I think it’s gonna be huge.”
”(Webの登場により)これからパソコンの世界に驚くべき変化が起こり、とにかくスゴいことになるよ。” まさに彼自身がこのビジョンを信じ、結果としてiPhoneはコンピューティングの世界に革命を起こし、コミュニケーションの在り方を変革しました。
しかし。
私が15年前にアップルに入社するとき、アップルに復帰直後の彼についての書籍が2, 3冊でていて全てに目を通しました。
今でこそ神様のような扱いをされていますが、1998年〜1999年の時点ですら、どの本にも必ず、変人、ペテン師、誇大妄想癖、という惹句が書かれていたことを強烈に覚えています。
熱烈なMacユーザーを除けば、当時の周囲の評判なんてそんなもの。特に日本での一般的な知名度はゼロに近かったはずです。(面白いのは、そのあと入社して、直接ジョブズと一緒に仕事をしたことがある人に聞くと、みんな口を揃えて「スティーブは天才だ」って言ってたことがなんとも対照的でした。)
このインタビューはそれよりも前、アップルに復帰するなんて誰も予想していなかったときのものです。
自ら創業した最愛の企業を追われ、新しく起ち上げたNeXTもビジネス的にはうまくいかず方向転換を余儀なくされ、そして経営するピクサーから、アニメの歴史を変えることになるトイ・ストーリーがいまだ発表されていない、1995年。
彼の人生の中でまさにどん底中のどん底と言えるその時に行なわれた1時間のインタビュー。
追われたアップルを超えられない失望と、いまだ癒えない傷を抱え、時たま憂いを秘めた表情を見せながら、
「ボクは(コンピュータの世界では)化石だよ。」「(業界では)傍観者だよ。」
と悲しくつぶやく姿。
しかし、抑えきれないコンピュータへの情熱と、未来へのクリアなビジョン。
当時、彼のビジョンに耳を傾ける人の数は、今とは比較にならないごく少人数だったでしょう。そして彼が自分のビジョンの正しさを自らの手で証明することになるとは、本当に誰も想像していなかったはず。
そりゃ誇大妄想と呼ばれてもおかしくない。だってまだこの時、(Macintosh以降)ジョブズは何も実現していないのだから。当時彼をそう評するのはある意味当然だったとも言えます。
そして彼自身ですら、インタビュー後の15年間で起こる奇跡のような復活劇をこの時点ではおそらく想像すらしていなかったでしょう。
だけど、将来何らかの形で点がつながると信じていた。
“This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.”
”この手法が私を裏切ったことは一度もなく、私の人生に大きな違いをもたらした。” 結果だけを見てジョブズを天才だというのは簡単ですし、もちろん私も彼は天才だと思います。
ただそれだけの才能を抱えながら、世間からほぼ忘れられ、地に這いつくばるような経験をしながらも、何かを信じてそこから立ち上がろうとするその意志と姿勢。
それこそが、私は感動的だと思うのです。
“You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever. This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.”
”先を見通して点をつなぐことはできない。振り返ってつなぐことしかできない。だから将来何らかの形で点がつながると信じなければならない。何かを信じなければならない。直感、運命、人生、カルマ、その他何でも。この手法が私を裏切ったことは一度もなく、私の人生に大きな違いをもたらした。” 幸運にも我々は知っています。この1995年時点での彼の点がどういう点につながっていくのか。
スタンフォード大学での講演はまさにこの挫折の時代の経験を通して出てきた言葉でもあるでしょう。
であるならば、その原点の一つをきちんと確認しておくべきじゃないでしょうか?
「諦観をのぞかせながらも、しかしコンピュータの未来に対する溢れる情熱。」
「過去の成功と失敗から謙虚に学ぶ姿。」
そして
「点がきっと何かに繋がると信じてどん底の中で悩みもがきながらも前に進む姿。」
“you have to trust that the dots will somehow connect in your future. ”
”将来何らかの形で点がつながると信じることだ。” まさにこの言葉を噛み締めながら観る1時間。
深く心に響く、インタビュー。
iTunes Storeで、レンタルで400円から視聴できます。(HD版は500円)
↓また、英語と対訳がまとまった本も出ています。
↓Kindle版のほうが少し安いようです。
P.S. ジョブズの動画について、YouTubeで観れるものについては以前こんな記事も書きました。
多くの人が抱えている人生についての思い込み。 | カジケンブログ
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